スターバックス物語⑤
店の雰囲気も、コーヒーの味もさしてこだわりはないものの、スタバだけはなぜか、他のカフェにはない
「特別感」を感じさせてくれるのはなぜでしょう。
それはたぶんスタバには、スタバから生まれたDNAみたいなものが
店、商品、サービス、理念の隅々にまで浸透しているからではないかと思います。
お店をそっくりそのままコピーして増やしていったような、お洒落さのバーゲンセールのようなチェーン店とは一線を画す、
強烈な「スタバらしさ」のルーツが強調されているように感じます。
スタバも確かにチェーン店であることに変わりはありませんが、チェーン店といえど、それぞれの店が店ごとに個性を強く発していて、
それでいながら「ザ・スタバ」という「らしさ」を余すところなく代表しています。
今回は大禅ビル(福岡市 舞鶴 賃貸オフィス)のある赤坂・舞鶴エリアのスターバックスについてご紹介します。
■大濠公園のスターバックス
大禅ビルから少し足を伸ばしたところに「福岡一美しい公園」と誉れ高い大濠公園が広がっています。
風光明媚そのもので、福岡城跡に隣接し、県外や海外のお客様を案内するのにこれ以上福岡らしさをアピールできる絶好スポットはほかにありません。
そんな一等地に
「スターバックス」
がお洒落を畳み掛けるかのように佇み、観光客、散歩客、家族連れの憩いの場となっています。
ここから大濠公園の水景を一望の内に収めることができ、
「湖と空、木々と草花を眺めながら、香り立つコーヒーをゆっくり傾ける」
という優雅なイベントが実現できちゃう空間なわけです。
ですからこのお店に来るお客様は、どちらかと言えばゆったりした時間を味わいたい、足を休めたい方が多いような気がします。
だからこの店でのお客様の滞在時間は長めな印象があります。
昔はお店の建物だけでしたが、あまりに混むようになったのか、いつの間に半屋外の座席スペースが拡張され、
吹く風を頬に感じながら一杯のコーヒーを嗜めるという、グレードアップしたコーヒー体験ができるようになりました。
読書する人、話に花を咲かせる友人や家族連れも目立つ。最近富みに増えたのは、海外からの観光客の方々。
素敵な光景ですね~。
大濠公園のスターバックスは
「リージョナル ランドマーク ストア」
といって、
地域の象徴となる場所に建てられ、凝った外観や内装のデザインを特徴とする全国25店舗あるコンセプトストアの一つです。
この店舗のコンセプトは「グリーンストア」。
景観維持と省エネに気を配ったデザイン、FSC認証を取得した木材の使用、さらにコーヒーの豆かす、
公園の落ち葉を用いた堆肥作りといった環境配慮をブランドとして発信し、
ユニークは価値創出の役割を担っている戦略的なお店なのです。
■赤坂交差点のスターバックス
大禅ビルの徒歩圏内にもう一軒スターバックスがあります。
赤坂交差点のスターバックス、正式名称は
「スターバックスコーヒー 赤坂門店」
です。
天神に隣接する商業地区・赤坂のど真ん中にあり、なんなら店舗が入っている建物もオフィスビルです。しかも場所は交差点。
だからお客様は働く方々が多いような気がします。
もちろん読書したり新聞を読んだり、休んだりされている人もおりますが、
それ以上にパソコンをカタカタ叩いている方人、打ち合わせをしている人、用事前にちょっと立ち寄ってコーヒーをテイクアウトで買うような人が多い。
客の滞在時間は比較的に短く、回転率は高めなのではないでしょうか。
店自体もスタンダードなスタバらしいシンプルなデザイン。
限られた空間を最大限に活かせるような作りとテーブルの配置になっています。
ここのお店の最大の特長は、交差点に面した天井までの一面のガラス張りですね。
行き交う人や車の流れを存分に眺めることができます。
こういうせわしなく動く風景が好きな方もいらっしゃるかもしれませんね。仕事で戦うエネルギーを掻き立ててくれそうです。
人間観察が好きな人にとってもうってつけな場所でしょう。
もっとも、こちらの姿も通行人から丸見えですが(笑)
「働く人たちの味方であるお洒落スポット」
が、この店舗の立ち位置かもしれません。
私もビジネスマンの端くれなので、大濠公園店よりもこちらの店の方を多く使わせて貰っています。
■伝統か?革新か?
今までのコラムでご紹介したように、スターバックス誕生の原点は
「本物志向へのビジョナリーな追求」
でした。
高品質なアラビカ種の豆を用いたヨーロッパ風の深煎りを通じて
「本物が分かる人」
に対し本場のコーヒー文化を啓蒙する。
これがスターバックスの創業三人衆
ジェラルド・ボールドウィン
ゴードン・バウカー
ゼブ・シーゲル
が共有したミッションであり、
彼らがコーヒーの世界に足を踏み入れるきっかけとなったオランダ人コーヒーマイスター、
アルフレッド・ピート
から叩き込まれた背骨とすべき価値観でした。
スターバックス中興の祖、ハワード・シュルツが
「店でお客様にコーヒーを飲ませよう」
と強く提案した時も、
「高品質なアラビカ種コーヒー豆の販売店」
であるべきスターバックスのあり方に反するとして、創業者ジェラルドからかなり渋られます。
事業規模の拡大を追い、ましてや飲食業という未経験の事業に手を出するハワードの提案は、
価値観の純度を何よりも重視するスターバックスにとってあまりに冒険的で、
飲食業に手を付けてしまうと自分たちが大事にしてきたビジョンが損なわれる懸念があったからです。
結果的に勇気を持って変革を貫いたハワードに軍配が上がったわけですが、こうした
「伝統か?革新か?」
は、スターバックスに限らず、あらゆる経営現場で経営者を葛藤させる不変の命題です。
伝統と革新のバランスは?
伝統からどのくらいかけ離れた革新を打ち出していいのか?
伝統と革新、どちらも中途半端になりはしないか?
既存の市場、お客様への影響は?
新しい市場で新規のお客様を獲得できる見込みは?
などなど。
大禅ビルも創業から今日の「レトロオフィスビル」のコンセプトに至るまで、多くの起伏と苦悩を経験してきました。
スターバックスほど波瀾万丈ではないにせよ、日本の不動産市場にしたってバブル以降、左うちわで悠々自適の状態から程遠かったわけです。
一歩判断を間違えれば大禅ビルは今日まで生き残れなかったかもしれません。
「テナント様の成功が私共の成功」
の理念をぶらさずに、どこまで変われるか?リスクテイクできるか?
大禅ビルのアイデンティティとお客様への価値貢献のあり方を問われ続けた46年間でした。
■スターバックスが経験した伝統と革新の対決
「不断の革新で創られていく伝統」。
これは一つの理想形です。
しかし実現となると難しい。
今日のスターバックスが世界最大のコーヒーショップチェーンにまで成長し、今なおスタバファンの心を掴み続けられるのは
その難しい舵取りに成功したにほかなりません。
もちろん、コーヒー業界未経験のハワードの採用しかり、飲食業への展開しかり、大小様々な
「伝統と革新の対決」
を、それこそ数え切れないほど多く、スターバックスは経験してきたことでしょう。
次回からはハワードが社長となった以降、スターバックスが経験してきた「伝統と革新の対決」についてご紹介していきます。