博多商人たちの「初詣」

■参拝!えびす様

目覚ましい移住者の増加を誇る福岡は、人口減進む今のご時世にあって羨ましいくらいの独走ぶりを見せています。

 

さて、福岡で初めて年を過ごされる多くの方は、年始めの初詣もまつわる、とある福岡独特の風習をやがて目の当たりにします。

 

メジャーな行事として年明けに赴く初詣のほかに、福岡人が熱を上げるもう一つの「初詣」。

 

それが博多千代の十日恵比須神社で催される「十日恵比須まつり」です。

 

祭神の「えびす様」に一年間の商売繁盛の御利益を授かるべく、ちょうど仕事始め後の1月8日から11日の4日間に行われる

 

「正月大祭」

 

に数千人もの参拝客がどっと押し寄せてくる、商売の神様による商売人のための一大祭事。

 
十日恵比須9 (1)
 

どこか畏まった慎ましさが漂うお正月の初詣とは違い、十日恵比須まつりの雰囲気は一言で言えば「ワクワク」!

 

沿道を長々と連なる出店はもちろん、好々爺なえびす様のイラストが載った福引券を握りしめて長蛇の列に並び、

 
十日恵比須
 

くじを引くとおっちゃんたちの威勢のいい

 

「大当たりー!」

 

の声とともに渡される福笹や意匠の凝った種々の縁起物。

 
十日恵比須
 

それを互いに見せあっては笑ったり写真を撮ったり。

 

仕事や商売にかける素直な願望を参拝に込めていく活気が、実に生き生きとしていて、楽しい。

 

縁日を絵に描いたような盛り上がり。

 

商人のDNAを受け継ぐ、実に博多らしいお祭りなのです。

 

大禅ビルとしても中小企業の端くれでございますので、毎年欠かさずえびす様にお参りさせて頂いています。

 

正月大祭は四日間続きますが、境内は毎日のように朝から夜中までごった返すため、早起きして並んでいないとあれよあれよと言う間に参拝列が神社の外まで伸びてしまいます。

 

既に仕事始めを迎えていますので、朝は普通に出社です。

 

いくら天にまします神様にお参りするからと言って、大禅ビルに入って頂いているお客様という神様を疎かにしては商売繁盛も本末転倒なので、仕事に遅れるわけにはいきません。

 

ですので、参拝の日の朝は断固たる決意でベッドとは早めの決別を果たし、寒さの中一人で福引の行列に並んでいたものですが、、、

 

一昨年からひょんなご縁で友人のY氏と連れ立っての参拝が毎年恒例となっています。

 

話し相手がいるだけでも、ありがたい。

 

なんせお祭りを一人で来るようなもの、絵面が侘しすぎて目も当てられませんよね。

 

空くじなしの福引とは言え、嬉しい大当たりの福団扇を引き当てました!

 
十日恵比須
 

今年も開運間違いなしでしょう。

 

大禅ビル(福岡市 舞鶴 賃貸オフィス)の新たな一年は、えびす様から頂くめでたい縁起物と祈願章とともに迎えます。

 
十日恵比須
 

■十日恵比須神社ものがたり

なぜ「十日」恵比須なのか?九日じゃいけないのか?

 

それは十日恵比須神社の由来にまで遡ります。

 

十日恵比須神社から国道3号線を上って、東区香椎方面に車を20分ほど走らせたところに「香椎宮」という神社があります。

 
香椎宮2
 

立花山の小高い麓に建つ小ぢんまりした神社ですが、社名に「神社」ではなく「宮」とつくところから分かるように、天皇家の血筋を祭神として祀る由緒正しき神宮です。

 

第14代天皇・仲哀天皇、その后である神功皇后、そして息子の第15代天皇・応神天皇の三柱を祀るこの香椎宮は、侮るなかれ、

 

定期的に現天皇家から勅使を遣わされる全国に16社しかない「勅祭社」のうちの一社であり、最高位の社格を誇る神社です。

 

この香椎宮を今日まで代々繋いで来られた社家(しゃけ)は武内家とって言いまして、その末裔は今も香椎宮の近くに居を構えているのですが、

 

その先祖は仲哀天皇、神功皇后に仕えた伝説的忠臣・武内宿禰(たけうちのすくね)に当たります。

 

十日恵比須神社は、そんな名家である武内家とゆかり深い神社なのです。

 

16世紀秀吉の時代、香椎宮社家だった武内平十郎が博多に分家し商売を始めます。

 

1591年の1月3日に、平十郎は年初に際して香椎の実家に戻り、香椎宮、そして筥崎宮に初詣した帰りに、海辺でえびす像を拾い上げたそう。

 

そこで平十郎はえびす像を飾り、お供えをして拝むようにしたら、次第に知られ参拝する者が増えていきました。

 

最初は自宅に祀り、のち千代の松原に一社を建立したのが今の十日恵比須神社の始まりと言われています。

 

平十郎がえびす様を祀り始めた日が1月10日。これが十日恵比須神社の由来となりました。

 

今日の正月大祭の中日である1月10日は祭のメインである「正大祭」が催されています。

 

「落ちる神あれば、拾う神もあり」

 

というのとは全く意味が違いますが、拾った神様の像を真面目に祀ってしまう昔の人の篤い信仰心のお陰で、

 

今の私たちは晴れやかな期待を胸に仕事のスタートダッシュを切れるようになりました。

 

■ところでえびす様ってどんな神様?

ちょっと太っちょの笑顔なおじさん、商売繁盛に効くお得な神様!ぐらいのイメージは広く共有されているでしょう。

 
十日恵比須
 

えびす様は「七福神」の一柱です。

 

この七福神もよく耳しますが、読んで名前のごとく、日本で古くから福をもたらすと信仰されている神様の一団で、

 

えびす様のほかに、大黒天、福禄寿、毘沙門天、布袋、寿老人、弁財天が名を連ねています。

 
十日恵比須
 

宝船に乗って海を渡っている絵を目にしたことのある方もいるかもしれません。

 

さて、えびす様はこのメンバーの中でも独特なポジションを占めています。

 

というのも彼は日本の土着の神様、つまり日本オリジナルの神様なのです。

 

七福神のほかの顔ぶれ、例えば大黒天だとインドのヒンドゥー教、寿老人だと中国の道教と言った風に、いずれも海外由来の神様なのです。

 

一方えびす様は、諸説はありますが、十日恵比須神社では日本神話に登場する事代主神(ことしろぬしかみ)をえびす様として祀っています。

 

なおこの神様は、大黒天に当たるとされる大国主命(おおくにぬしのみこと)の子でもあって、

 

更に十日恵比須神社ではだいこく様も縁結びの神様として祀られているので、神様親子が揃っているというなんともありがたい神社なのです。

 

商売繁盛を体現したようなえびす様のふくよかなビジュアル。

 

もともとは漁業の神で、時代とともに商いのスキル属性を獲得していったようです。

 

大禅ビル向かいの長浜魚市場からもわかるように、博多は古くから海辺の町で漁業も盛ん、更に大陸との玄関口でもあったので商人たちがわんさか活躍していた貿易都市でした。

 

よりよい明日のために、日々を戦う自営業者やサラリーマンたちの願いを、400年にもわたり引き受けてきたえびす様。菅原道真に次いで福岡人から愛される神様なのではないでしょうか。

 

■えびす銭返却システム

十日恵比須神社名物の一つ・えびす銭。

 

200円で授け貰える縁起物で、白い紙の小さな包みの中に、江戸の「寛永通宝」や中国清朝の「乾隆通宝」といった「本物の古銭」が入っています。

 

これをお財布などに入れて持ち歩けば金運上昇!

 

人気なラッキーチャームです。もちろん私の財布内にも入っています。

 

しかし留意すべきは、このえびす銭は「貰う」物ではなく、あくまでえびす様から「お借り」する物なのです。

 

もともとは商いの元金(種銭)として、縁起のよいお金を貸し、これを元手に商売を行い、そして儲かったお礼に借りたお金を倍にして返していくという縁起を巡らせる風習だったそうです。

 

つまりこのえびす銭は一年ごとに返納しないといけません。

 

返してまた新しく借りるというシステムです。

 

借りたお金を元本と利息を添えて返す・・・

 

よく考えたらこれはもはや銀行ですな。

 

資本主義経済の本当の始祖はもしかしてえびす様なのかもしれませんね。

 

しかし近年「えびす銭」の返却率が非常に悪く、このままだとえびす銭の授与ができなくなるとのお話も聞きます。

 

えびす銭の不良債権化によってえびす様もデフォルト危機、ということです。

 

いくら心の広いえびす様でも、借りた金を返すという基本すら守れない商売人には御利益なんて授けないでしょう。

 

しかも神様からの借金を踏み倒すとか、バチが当たりそうで怖い怖い。

 

しきたりを絶やさぬためにも、商売繁盛の御利益に与るためにも、人様の金だろうが神様の金だろうが支払を滞納せずに、返すべきお金はちゃんと返したいものですね。

 
えびす銭
 

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