―舞鶴公園ものがたり②―
■多様な顔をもった舞鶴公園
大禅ビル(福岡市 舞鶴 賃貸オフィス)は全国の数ある公園の中でも珍しいタイプの公園ではないでしょうか。
その理由は多面性にあります。
まず、舞鶴公園の個性を最も特徴づける「歴史・文化空間」としての顔。
飛鳥時代で対外交流窓口を担った鴻臚館、江戸時代に黒田家が藩政を執った福岡城という、
日本史の中でも重要な価値を占める史跡が残っています。
明治に下ると、廃藩置県後に生まれた福岡県の県庁が最初に置かれたのも福岡城内でした。
後に「福岡聯隊」として九州男児の勇名を馳せた陸軍歩兵第二十四聯隊の兵営が建てられたのもここでした。
それから「自然豊かな空間」としての顔。
普通の公園にも樹木や草花は植栽されていると思いますが、舞鶴公園はレベルが違います。
花だけで言えば、春に福岡城を被さるように咲き誇る千本の桜を筆頭に、
初夏の名物・蓮の花はじめ、紫陽花、山茶花、花菖蒲。椿、睡蓮、芍薬。
牡丹に梅に藤の花など百花繚乱、四季を通して花が絶え間なく園内を彩ります。
更に、歳月を身に宿した見応え十分な雄渾な老木も、これでもかっというほどあちらこちらに林立しています。
ケヤキ、エノキ、クスノキ。センダン、ムクロジ、イチョウなど。
中でも幹周り5メートル超のクスノキの存在感は凄まじく、聳える姿は見る者を圧倒します。
そして舞鶴公園の三つ目の顔、それは「市民のスポーツと憩いの空間」です。
終戦後に建設された市民運動場と、その後の国体誘致・開催をきっかけに施設設備が進み、
今の舞鶴公園は20,000平米の陸上競技場をはじめ、野球場、テニスコート、
サッカー・ラグビー用の球技場が一箇所に集う総合運動場となっており、市民に広く開放されています。
自然豊かな空間に、これだけのスポーツ施設が整っている場所はそう多くはないでしょう。
広大な園内は散歩する人や運動するが行き交い、時には子どもたちが遠足に来ることも。
イベントやお祭りもしばしば催され、特に春の「福岡城さくらまつり」はライトアップされた幻想的な夜桜と福岡城を
一目見ようと大勢の観光客で賑わいます。
歴史と自然、スポーツと憩い、そして人との交わり。時代、風景、生活の節々が幾重にも積み重なってできた場所、それが今の舞鶴公園なのです。
■舞鶴のオフィスゾーンとのコラボの可能性
当コラムでも紹介しましたが、舞鶴地区は主に3つのポイントにおいてエリアのブランド価値が秀でています。
一つ目は「歴史・文化ゾーン」。
二つ目は「文教ゾーン」。
そして三つ目は「オフィスゾーン」です。
福岡のメイン商業地区である天神と博多に近接している舞鶴エリアです。
ともすれば存在感は隠れがちですが、その商業機能の集積は相当なレベルです。
エリアの個性としてまず挙げられるのが「リーガルエリア」です。
福岡法務局、高等検察庁、裁判所(高等、家庭、簡易)の所在地であり、周辺を星の数ほどの法律事務所が固めています。
法曹関連機関に加え、公証役場(大禅ビル内)、中央区役所、年金事務所、保健福祉センターなど行政機関、
更には郵便局、銀行(西日本シティ銀行、福岡銀行、北九州銀行)といったビジネスに不可欠なインフラも整っています。
企業も、ドコモ、東芝、電通、読売新聞、県水産会館など、有名どこが社屋を構えて集積しています。
交通インフラについて言えば、地下鉄、西鉄バスはいずれも徒歩圏内、更に福岡の中心部・天神へは徒歩15分
地下鉄で福岡空港へは10分とアクセスは抜群で、通勤・出張に最適なビジネス環境です。
舞鶴地区の歴史文化面において、舞鶴公園は地区全体の価値の中心軸を担っていると言ってもよいでしょう。
また文教面では、子どもや学生らにとっては憩いや学び、運動のよきスポットとしても、舞鶴公園はニーズを受け止め、価値を提供しています。
一方、地区の持つオフィスゾーンとしての個性に、舞鶴公園はまだ十分にコミットできておらず、
オフィスゾーンの価値を更に引き出す空間に、舞鶴公園はなれるではないかと思います。
周辺にあれだけオフィスビルが集まっているわけですから、オフィスワーカーにも集まって、使って貰う仕掛けはできないでしょうか。
例えば一角で「舞鶴公園オープンオフィス」を作ってみるのはどうでしょう。
軽食やコーヒーのコーナーがあり、テーブルや椅子もあってちょっとした打ち合わせも仕事もできる。移動式のバーを設えてもよい。
空間を上手く仕切れば即席のミーティングルームのできあがり。
リラックス空間も作って、サラリーマンのおじさんたちが好きそうなゴルフコースなんかを置いて、
ちょっと体を動かすのに使えたり、ふかふかのソファーを置いてうとうとできたり、
更にビジネス書や新聞、雑誌が読める移動読書館もあればなおGOOD。
なんなら、テーブルも椅子も貸し出し制にして、思い思い好きな場所で使えるようにしてもよい。
もちろんエリア全域はWi-Fiカバー、喫煙コーナーも完備。
たまにはオフィスビルから出て、大自然をオフィスに仕事してみる。
自由に体も動かせるしリラックスもできる。狭い空間で根詰めるより、よほど効率がよく創造性が刺激されるように思います。
舞鶴公園から発信できる働き方改革です。
午前中はオフィスビルで働き、ランチは舞鶴公園で取って、ちょっと休んでから午後はそのまま公園で仕事する、といったような働き方もできそうです。
■舞鶴公園のブランド価値アップは可能か?
これほど多様な価値を持つ都市型公園自体が貴重で、そこへオフィスワーカーの流れも作れるようになれれば、
舞鶴公園の公共空間としての新たな価値を開発でき、公園のブランド力も一段と上がることが期待されます。
舞鶴公園のブランド力アップのメリットは主に3つあるでしょう。
1つは、公園の利用者数の増加です。
公園は公共空間(パブリックスペース)です。
そして公共空間の目的は、より多くの人に利用して貰い、価値を提供すること。
より多くの層の人に対して、仕事から余暇まで、様々な価値を舞鶴公園は創り出していけるでしょう。
それだけのポテンシャルの深みを舞鶴公園は持っています。
2つは、収益アップです。
既に大小様々なイベントが行われている舞鶴公園ですが、集客力とブランド力を正確に発信力できるようなれば、
その付加価値を公園使用料や広告スポンサー料に転換できるのではないでしょうか。
公共スペースなので収益事業を行うのは難しいかもしれませんが、価値に見合うだけのリターンがないのは不健全ですし、
何よりサスティナブルではありません。民間に管理・企画・ファイナンス業務を委託し、
舞鶴地区の近年の地価とブランド力上昇に合わせて適正な収入を得ていく仕組みを作っても良さそうに思います。
広大な植栽とスポーツ施設のメンテナンスはもちろん、特に福岡城跡の維持・補修は少なくない費用がかかります。
そうした費用を全て税金に頼るのではなく、公園自身が稼ぎ、そして利益を設備投資や維持管理を通じ、利用者に還元していく。
利益循環のサイクルを作ることで舞鶴公園は機能とブランド価値を持続でき、利用者と舞鶴地区もそれを享受し続けられると考えます。
ただ漫然と空間を貸し出して、利用料を貰うだけではあまりに勿体無い。ブランディングへの積極的な意志と、
それを実行するためのパークマネジメントを一舞鶴民として期待したい。