米中貿易戦争について考えてみる①

大禅不動産研究室は大禅ビル(福岡市 舞鶴 賃貸オフィス)が運営する「ちょっと役立つビジネスコラム」です。

 

不動産に限らず、地元ネタ、企業経営、歴史と人物、時事、海外ビジネス、職業研究について書いています。

 

さて、今回のシリーズはホットな話題、「米中貿易戦争」です。

 
米中貿易戦争

■火種は貿易黒字

いまや世界の関心はシリアや北朝鮮よりも、アメリカと中国の対立、具体的には米中貿易戦争になっています。

 

九州福岡の片隅の一レンタルオフィスである大禅ビル(福岡市 舞鶴 賃貸オフィス)からたまに硬い話題もよいかと思い、所感を書いてみようと思います。

 

米中間の火花は、後で述べるようにただ貿易の領域に留まるものではありませんが、貿易と銘打っているのでひとまず両国間の主なデータをみてみたい。

 

米中の関税の殴り合いが本格化するのは去年からで、2017年の中国の対米貿易黒字額が2758億ドルと過去最高を記録したのを皮切りに、まずアメリカがセーフガードを発動。

 

続いて関税合戦が勃発、各々相手に対し500億ドル規模の関税措置を互いにかけあってから、

 

アメリカはさらに2,000億ドル分の輸入に対し課税を命じ、更に今月になってアメリカは追加で2000億ドル相当の中国からの輸入品に対し関税率を10%から25%に引き上げました。

 

これに対し中国は報復として600億ドル規模相当のアメリカの輸入品の関税率を最大25%に引き上げる予定です。

 

金額を見るとアメリカの方が強気に押しているようです。

 

2018年の中国からアメリカへの輸出総額は5390億ドル。

 

このうち2000億ドル×2+500億ドル、計4500億ドル分が既に追加課税され、残りの枠への追加関税についてトランプは言及しています。

 

かたや中国はアメリカからの輸入総額は1,200億ドルで、既に今の段階でほぼ枠一杯の1100億ドルにまで関税がかけられています。

 

そのため、アメリカが千億ドル単位で大砲を撃ってきても、中国は関税に関してこれ以上撃ち返せないのが現状です。

 

ほかに中国が切れるカードがあるとすれば世界の生産量シェアの8割を握るレアメタルの輸出制限だと見られています。

 

アメリカと中国、お互いにとって最大の貿易相手国です。

 

2018年のアメリカの貿易赤字は全体で8787億ドルですが、このうちの約半分の4192億ドルが対中貿易赤字。

 

日本一国の税収と同じくらいの規模で、確かに巨大な赤字です。

 

一方中国は、対米貿易黒字は上昇傾向にあり、過去最高を記録した2017年から去年は更に17%増の3233億ドルに達しています。

 

アメリカを含めた全体の貿易黒字は3517億ドルで、実に9割を対米黒字が占めた計算になります。

 

貿易不均衡だというアメリカの主張に対し中国は

 

「貿易黒字の半分以上は外資企業の輸出による輸入であり、特に中国がアメリカに輸出する商品は国内で組み立てた最終製品が多いため金額も膨らみやすい」

 

と主張。

 

自前の製品を輸出して稼いだ黒字は4割に満たないとも訴えています。

 

ただいずれにしろ、中国にとってアメリカとの貿易黒字は自国の貿易収支そのものを左右する要素となっております。

 

逆に言えば中国のアメリカ貿易への依存度の大きさの表れでもあります。

 

中国を最大の輸入相手国としているアメリカも返り血を浴びるでしょうが、中国の貿易基盤を大きく揺さぶるであろうトランプの一手は、重みを伴うインパクトだと言っていいでしょう。

 
米中貿易戦争①

■中国の泣き所は技術と食糧

現時点では中国の方が幾らか分が悪いように感じます。

 

理由の一つは「製造業コア技術のアメリカへの依存」です。

 

新エネルギー車や人工知能(AI)、5Gなど、一部ハイテク産業で世界の先端を走る中国。

 

しかしながら、高性能半導体の製造といった高付加価値なコア技術はアメリカ、日本など先進国の供給に依存しており、アキレス腱になっています。

 

中国の半導体需要は世界全体の50%、一部製品では70~80%を占めているのに対し、自給率はたった8%に留まっています。

 

国産の半導体も使われていますが、家電製品用などが主で、精密機器や自動車、

 

軍用機器で必要とされるハイスペック半導体およびその部材については輸入に依存し、国産化研究も未だ途上といったところです。

 

それともう一つ見落としがちなのは「農産物」です。

 

アメリカ産農産物への依存も深刻で、例えば大豆で言いますと大豆輸入に占めるアメリカ産の割合はおよそ半分に達します。

 

2017年の中国国内の生産高は1400万トンに対し、輸入量は9554万トンに上ります。自給率が脆弱なまでに低い。

 

では大豆の自給率を上げればよいのかと言うとそう単純ではなく、土地利用型作物である大豆の栽培には広い農地が必要で、

 

1トンの大豆を生産するのに平均5,000㎡の農地を用意しなければなりません。

 

仮に全需要分を国産で賄おうとするなら必要な農地は約4,800億㎡で、中国の全農地の約3分の1に当たります。

 

もちろんこれだけの農地を全て大豆生産だけに回すことなんてできませんし、農地面積の拡大もすぐには難しい。

 

大豆は植物蛋白の摂取源であり、中国では古くから食され、日常的な食材として定着しています。

 

それだけでなく、加工後に出る大量の大豆残渣は豚や牛の飼料に使われているので牧畜業にも関係し、

 

仮に大豆の安定供給が確保できなければ大豆と加工品、更に肉類が価格上昇のリスクに晒される可能性が出てきます。

 

「倉稟満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」

 

の通り、特に中国のような巨大な人口を抱える国では、食糧の安定は社会の安定を支える土台なので、疎かにできません。

 

ブラジルなど他の国から大豆の購入を増やしてリスクを分散させるという考え方もあります。

 

ただ残念ながら、世界の大豆生産の殆どはアメリカの穀物メジャーが牛耳っている状況で、

 

他の国から大豆を入れるにしても、生産から販売までのバリューチェーンの殆どがアメリカ企業の手の中にあることが多いのです。

 
大豆
 

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