冠婚葬祭について考える
■結婚式、延期!
令和2年夏に挙げる予定だった結婚式・披露宴ですが、新型コロナウイルスの影響により、泣く泣く延期する運びとなりました・・・。
式場側とも相談して、結婚式は親族のみで冬に挙げて、ほかの皆様には結婚式を収録した動画をweb上でお見せする運びとなりました。
それまでにコロナが収まればよいと願うばかりです。
結婚式も披露宴も、人生の節目となる儀礼。
自分たちの約束を内外に示す場だと思っています。
自分たちにとっても、周りの人たちにとっても大事なイベントなのです。
じゃあなんで大事なんだろうか?
と思って、今回は結婚式を始めとする「冠婚葬祭」についてちょっと調べてみました。
■冠婚葬祭ってそもそもなんだろうか?
冠婚葬祭のそれぞれの字には別々の通過儀礼を意味しています。
「冠」とは元々「元服」に由来します。
奈良時代以降のいわゆる成人式で、「元」は頭、「服」は着用、「頭に冠をつける」を意味します。
今でこそ成人式は20歳ですが、昔は元服年齢には決まった決まりは実はなく、早ければ5~6歳、遅ければ20歳過ぎまで幅がありました。
江戸時代になると武家や庶民の間では元服時に烏帽子をつけずに、前髪を剃って月代にしていました。
女性の元服とあって、18 ~20歳の間くらいで行っていました。
女性の場合、髪を結ったり、厚化粧したり、お歯黒や眉を剃ったりします。
そして「婚」はもちろん、結婚ですね。所帯を持つ儀式を指します。
「葬」とは家族、親族の死を弔い、喪に服す行事で、「祭」とは法事やお彼岸、お盆などに行う先祖供養を指します。
日本人が一生の間に経験する通過儀礼は細かいものも挙げると更に多く、地域や信仰によっても違ってきますが、
冠婚葬祭はその中でも、日本人にとって特に重要な存在である家、家族、親族、先祖と自分との関係を規定・公示する基本的な通過儀礼です。
このように冠婚葬祭には歴史的な裏付けるがあり、だから熟語にもなっているわけです。
■現代では「婚」と「葬」が事業化
戦後の人口増加と高度経済成長とも相まって、冠婚葬祭の中でも「婚」と「葬」だけがサービス産業として発展していきました。
冠婚葬祭に限らずですが、産業として成立する要因の一つは「コストへのリスクヘッジ」です。
もともと冠婚葬祭は多額の出費が必然な
「一大イベント」
ではなく、慎ましく行う催事でありましたが、今や結婚式は
「女の子の人生最大の晴れ舞台」
とされ、オシャレな会場に上司や同僚、家族親戚友人を多数招くようになり、信仰に関係なく
「教会でウェディングドレスを着て神父の前で愛を誓うもの」
という伝統的な神前式ではないスタイルも戦後定着していきました。
葬式も然り。
華やかさではないにしろ、こちらはこちらでお墓というまとまった出費が発生します。
つまり手間とお金というコストのかかるイベントになったわけなんですね。
手間は外注へのニーズを生み、お金は保険制度が生まれるきっかけになります。
外注、つまりアウトソーシングはイメージしやすいと思います。
でも保険は?って思われるのかもしれません。
婚と葬は「未来に訪れる出費」という性格を持っています。
ですから、その経済的リスクをヘッジするための制度ないしサービスが発展することになります。
婚礼の場合、結婚する時期にはまだそれ相応の経済力が備わってない可能性もありますし、葬儀も突然やってくるから、
出費発生時に相応の額を事前に用意しておくことのは難しい場合もあります。
このため、この二つの分野では保険に似た「互助会」という相互共済目的の金融制度が発展しました。
経済リスクの軽減を望む個人が「会員」となり、毎月会費を積み立てて、挙式や葬儀を行う際に契約額に見合ったサービスを受けるという仕組みです。
挙式や葬儀が発生しない時は「資金の過剰在庫状態」になり、保険会社の資金と同様にこの資金も資産運用に回されます。
■リピーター確保が難しいビジネス
婚礼と葬儀には他の業界にはない特徴があります。
それは「リピーター」の確保が難しいこと。
今の時代でこそ潜在顧客のデータベースをもとにマーケティングとプロモーションを行える時代になりましたが、一昔の時代は、例えば婚礼にしてもいちいち
「近々どうですか?」
と立ち入った質問するわけにもいきませんし、葬儀にしても
「もうすぐ死にそうな人を紹介してくれ」
と聞くのも憚れます。
では婚礼屋と葬儀屋はどのように営業活動を行っていたかと言うと、それこそ互助会の会員を獲得して見込み客のプールを形成していくんですよね。
「いずれやってくれる大事なイベントのために、今から準備しませんか?」
という触れ込みで互助会への入会を勧誘するわけです。
一番大きいメリットとして、互助会員は一般料金よりもお得な料金で利用できる点でしょうか。
例えば婚礼ですと、会場やウェディングドレスといった施設を互助会の会員価格で利用できるので、結婚式の費用負担を軽減できます。
一方デメリットもあって、積み立てた掛け金に対して利息は付きません。
また自分が加入している互助会の運営施設だけに利用が限定される、少額積み立ての場合は積み立て金以外の追加費用が発生することもあります。
■通過儀礼のスタイルの多様化
近年になって婚礼葬儀のスタイルも多様化しており、オーダーメイドで行うケースも多くなっています。
例えば婚礼ですと、キリスト式でも神前式でもなく、宗教色を抜いた「人前式」であったり、レストランやコテージ、
農園などを借りたりして行う個性的でアットホームな挙式も広がっています。
披露宴の内容もトレンドがあるみたいで、新婦のお色直しドレスを2着目も白いウェディングドレスを着たいという人も徐々に増えているようです。
それからインスタ映えを重視するスタイルもあって、昔ながらのキャンドルサービスをやめて、会場内にフォトブースを設置する場合もあるようです。
インスタにその日用のハッシュタグを作成して、撮った写真をそこで共有するとか。
私たちの親世代からすれば時代の流れを感じるかもしれませんね。
スタイルの幅が広がるということは、プロデュースの重要性が増すということ。
新郎新婦の要望から式の内容を構成し、限られた予算の中から式をプロデュースしてもらう
「ウェディング・プランナー」「ブライダル・コーディネーター」
の存在が益々重要になってきます。
それから葬儀も同様、「ユニーク葬儀」といったスタイルも出始めています。
最近では「エンディング産業」なんて言われたりしています。
結婚件数と比べて、高齢化社会の進行が亡くなる人の数は増え続け、ピークの2040年には167万人と推定されています。
葬儀市場の拡大が見込まれている所以ですが、人々の死生観や葬儀や埋葬、供養に対する考え方も大きく変わってきています。
例えば
親族など親しかった人たちが故人を送る「家族葬」
や
火葬のみの「直葬」
埋葬でも散骨や樹木葬、中には遺灰をカプセルに詰めて、ロケットで宇宙空間に打ち上げる宇宙葬
や、遺骨をダイヤモンドにするといった新しい葬儀、供養の形が広がっています。
婚礼にしても葬儀にしても、カジュアル化な雰囲気に進んでいるような気がしますね。
厳粛な場所で堅苦しい挨拶を交わし、決められたコース料理を決められた作法で食べるのは疲れる。
それよりも、もっと気軽に皆で時間や食事を楽しみたい、ありのままの自然体と距離感で想いを分かち合いたいという人が増えている時代なのかもしれませんね。
以上、大禅ビル(福岡市 赤坂 貸事務所)からでした。