建築史シリーズ モダニズムの建築たち①

弊社、大禅ビルが行っております貸しビル業は、本質的には空間に付加価値をつけていくプロデュース業だと考えています。

 

そのような仕事をさせて頂いている身ですから、建築やインテリア、ファッションといったデザイン全般にアンテナを張っており、

 

そこで得たヒントやインスピレーションを大禅ビルの空間づくりに活かすこともあります。

 

とは言え、私は専門的にデザイナーとしての教育を受けたことはありませんから、本職の方々と到底比べられません。

 

本物のデザイナーというのは、既存の概念を超越するような美を生み出すアーティストに近い存在と言ってよく、その足跡の後には全く新しい地平が拓けていくものだと思っています。

 

このシリーズではそうしたデザイナーたちが紡ぎ上げてきた建築の歴史を中心にご紹介していきます。

 

◯アール・デコの誕生

今回ご紹介するのはアール・デコです。

 

 

アール・デコは1925年に開催されたパリ万国装飾美術博覧会で花開いた様式です。

 

博覧会の正式名称は「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」(Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels modernes)、アール・デコ博と略称されました。

 

この略称にちなんで一般的に「アール・デコ」と呼ばれるようになりました。

 

キュビズム、バウハウスのスタイル、当時発掘が相次いだ古代エジプト美術の装飾模様、アステカ文化の装飾、日本や中国などの東洋美術など、古今東西からの様々な引用や混合が特徴とされています。

 

以前紹介したアール・ヌーヴォーは植物などを思わせる曲線を多用した有機的なデザインでしたが、自動車・飛行機や各種の工業製品、近代的都市生活といったものが生まれた時代への移り変わりに伴い、装飾を排除した機能的・実用的なフォルムが新時代の進歩的な美意識としてアール・デコが様式化されました。

 

アール・デコは地球規模で広がり、大衆に消費された最初の様式でもあります。

 

富裕層向けの一点制作のものが中心となったアール・ヌーヴォーのデザインに対し、アール・デコのデザインは一点ものも多かったものの、大量生産とデザインの調和をも取ろうとしました。

 

そもそもアール・デコには強い理念や主張がないため、融通性の高い様式と言われ、植民地からの独立運動が各地で勃興していた時代に多くの国々で国民のアイデンティティを加えるための様式として適していました。

 

◯アール・デコの特徴

例えば、多くのアール・デコは縦長の窓が間隔を空けて並び、壁面に対しては引っ込み、窓廻りにモールディング(光と陰でメリハリをつけるようにかたどられている輪郭を持つ、細長い形状の装飾や仕上げ)が設けられています。

 

 

また、円や楕円、八角形の窓やジグザグ線、放射状の線、さらにマヤやインカ、エジプトなどの幾何学模様の装飾が施されており、無装飾を志向したモダニズム建築とは異なるマインドを宿しているのもポイントです。

 

さらにピラスター(柱型)や梁型は表現され、軒にもコーニス(洋風建築の軒と壁の頂部に帯状に取り巻く装飾)がつけられており、上下左右の壁面に分節感をもたせています。

 

◯摩天楼とアール・デコの関係

ニューヨークのクライスラービルはアール・デコの代表格です。

 

斜めの線やジグザグ線が駆使され、いま見てもどこか宇宙船のような近未来的なデザインになっています。

 

 

アメリカは植民地から独立した国だったため、自由の担い手の象徴としてアール・デコはうってつけでした。

 

したがって、アメリカ国内のどの都市にもアール・デコはあります。

 

その中でもバラエティに富んでいるのがニューヨークです。

 

この年代につくられた摩天楼には必ずといってよいほど、開口部周辺や頂部に典型的なアール・デコの造形が見られます。

 

時代はその後、モダニズム建築の流行に従い、アール・デコは一時期、無駄なものとして排斥されました。

 

装飾ではなく、規格化された形態を重視する機能的モダニズムの論理に合わないことが理由です。

 

しかし1966年、パリで開催された「25年代展」以降、モダンデザイン批判やポスト・モダニズムの流れの中で再評価が進められています。

 

◯ル・コルビュジエの功績

近代建築推進者の一人ル・コルビュジエは、デ・ステイルや装飾を否定する建築家アドルフ・ロースなどに大きな影響を受けます。

 

キュビズムの造形を装飾的であると批判し、より合理的に秩序立った構成が望ましいと主張しました。

 

そして、幾何学構成によるピューリスム(純粋主義)がまず絵画の形式として表明されます。

 

やがてこのピューリスムは「白」を基調としながら自身の建築に反映されていくのでした。

 

ピューリスム建築の特徴を一言で言えば、白と直角による幾何学構成のデザインです。

 

そしてサヴォア邸は高度に幾何学操作した上で、コルビュジエが提唱した「近代建築の5原則」を融合させたピューリスムの傑作です。

 
サヴォア邸4
 

コルビュジエ平面の開放性に注目しました。

 

それまでの西洋建築は構造上壁だらけで、窓は垂直で数が少なく、内部への光は限定的でした。

 

一方、サヴォア邸では水平連続窓を設けることで、あらゆる方向から大小さまざまな光を採り込みました。

 

「平面・立面が自由」と聞くとなんでもありと思うかもしれませんが、機械的正確さと法則によって美しいバランスで設計されることが重要でした。

 

コルビュジエはルネサンスなど過去の建築から比例の考えを継承しようと考えていました。

 

その探求は「建築の原型」となるべく発案されたドミノ・システムに結実します。

 
コルビュジエ13
 

これにより外壁と柱・梁を構造で分離しました。

 

直方体が浮遊するような外観の印象を作っているのが、細長いプロポーションの柱です。

 

◯モダニズムによって承継されたもの

実は、ピューリスムの原理は、デ・ステイルによって発見された白と原色と直角による幾何学的美学の延長線上に展開しています。

 

モダニズム誕生となるバウハウスもこの流れに乗っていると言えます。

 

また1929年に、モダニズム建築の究極点であるミース・ファン・デル・ローエのバルセロナパヴィリオンが完成していたこともあり、この頃のコルビュジエは岐路に立たされていました。

 

晩年のコルビュジエはそれまでのピューリスムから自然石やレンガの使用で手触りと素材感を獲得し、ダイナミズムのある形態、空間をつくる方向へ舵を切り、ロンシャンの礼拝堂といった、それまでの作風からは予想だにしなかった新しい力強さに溢れる建築を生み出すに至ります。

 

以上、大禅ビル(福岡市 舞鶴 賃貸オフィス)からでした。

 

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