デザイナーたちの物語 フィリップ・ジョンソン
弊社、大禅ビルが行っております貸しビル業は、本質的には空間に付加価値をつけていくプロデュース業だと考えています。
そのような仕事をさせて頂いている身ですから、建築やインテリア、ファッションといったデザイン全般にアンテナを張っており、
そこで得たヒントやインスピレーションを大禅ビルの空間づくりに活かすこともあります。
とは言え、私は専門的にデザイナーとしての教育を受けたことはありませんから、本職の方々と到底比べられません。
本物のデザイナーというのは、既存の概念を超越するような美を生み出すアーティストに近い存在と言ってよく、その足跡の後には全く新しい地平が拓けていくものだと思っています。
◯アメリカのモダニズム建築家
今回ご紹介するのはフィリップ・ジョンソン。
アメリカのモダニズムを代表する建築家です。
代表作には、コネチカット州にあるモダニズム建築「ガラスの家」、ポストモダン建築「550マディソン・アベニュー」(ニューヨーク)、「190サウス・ラ・サール通り」(シカゴ)などがあります。
アメリカ建築家協会ゴールドメダル、1979年には第1回プリツカー建築賞も受賞しています。
単一のスタイルにとらわれず、モダニズムとポストモダニズムの要素を自在に組み合わせるスタイルがジョンソンの特徴です。
◯ミース・ファン・デル・ローエのパートナーとして
ジョンソンはオハイオ州で生まれ、ニューイングランドで育ちました。
名門ハーバード大学に入学、哲学を専攻。
在学中に弁護士であった父から譲られた株が高騰し、巨額の富を手にします。
卒業後はヨーロッパを巡り、古典建築や近代建築に触れました。
1930年、ニューヨーク近代美術館(MOMA)のキュレーターに就任。建築展を精力的に手掛けながら建築への関心を深めていきます。
その後美術館を辞め、再びハーバード大学に入学し、マルセル・ブロイヤーとウォルター・グロピウスに師事して建築学を学びます。
1941年、ジョンソンは最初の住宅を設計し、実際にマサチューセッツ州に建てました。
ミース・ファン・デル・ローエの影響を強く受けたこの住宅は、敷地の周りに壁があり、それが構造体と一体化しています。
戦後は再びニューヨーク近代美術館(MOMA)のキュレーターに就任します。
ドイツ人建築家のミース・ファン・デル・ローエの展示会を開催し、アメリカで初めてミースを紹介しました。
また、ミースの様式を取り入れた小さな家も建てました。
「ガラスの家」と呼ばれるその建築は、現代建築のランドマークとなっています。
◯代表作
ガラスの家
敬愛するミースにインスパイアされて設計した、ジョンソン自身の別荘です。
広大で美しい敷地には十数棟のさまざまな建築が建てられており、この住宅はその1つです。
ガラスの家は、建材としては近代以降に用いられるようになった鉄とガラスという素材が可能にした、現代建築の象徴ともいえる住宅です。
構造体をスリム化し、大きな開口を可能にする鉄。
透明性・反射性によって内と外の空工間を一体化させ、開放的な空間を創出するガラス。
この住宅は、2つの新建材の特徴を最大限生かしてつくられた作品です。
4面ガラスの壁は外部と内部を同化させ、内部に入ると、あたかも美しい林のなかで生活しているような錯覚を起こします。
ガラスには反射性と透明性という性質があります。
ガラスに反射する屋内と、ガラス越しの自然という虚像と実像が、多様な空間を生み出すのです。
室内には、トイレとシャワールームを納めた円筒形のコアと暖炉以外に、空間を仕切る障壁がありません。
収納家具や絵画のパネルなどを使い、あいまいに領域を規定しているだけです。
それにより、多種多様な空間体験が可能となっています。
広大な敷地のなかには、ガラスの家をはじめ、レンガの家、パビリオンなど大小10の建物が建っています。
広い敷地と豊かな自然がなければ、存在しえない建築だったと言えます。
シーグラム・ビルディング
ジョンソンは、ミース・ファン・デル・ローエとともに、39階建てのシーグラム・ビルディングを設計しています。
建物の設計はミース、レストランの内装はジョンソンが担当しました。
ブロンズとガラスでできた象徴的なタワーです。
マディソン・アベニュー550番地(旧AT&Tビル)
ジョンソンの最もよく知られた作品の一つです。
1978年から1982年にかけて建設された超高層ビルで、8階建ての高さのアーチ型の入口が特徴的です。
建物の大部分はオーソドックスなモダニズム様式でしたが、マンハッタンという立地と規模から、ポストモダン建築の最も有名な事例となりました。
キリスト大聖堂
カリフォルニア州のガラス張りの教会です。
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1981年の完成時には「世界最大のガラス張りの建物」として話題になりました。
建物を構成する1万枚以上の長方形のガラスは、構造体にボルトで固定されておらず、シリコンによって接着されています。
これは、マグニチュード8.0の地震にも耐えられるようにするための措置だそうです。
ヨーロッパ門
スペインの首都マドリードのカスティーリャ広場の近くにあるツインオフィスビルです。
タワーの高さは114メートル、26階建て。
特徴的な傾斜の角度は15°という世界初の傾斜型超高層ビルです。
リップスティック・ビルディング
ニューヨーク市マンハッタンにある138メートルの超高層ビルです。
名前は、フォルムが口紅に似ていることに由来します。
このフォルムは通常の四辺形の超高層ビルに比べて必要となる敷地のスペースが少なくて済み、これによりビル周辺を通る歩行者の通行の利便性を確保することができるそうです。
建物の底には2本の高い柱があり、これが広大なホールの入り口となっています。
外壁は赤い御影石とステンレスの連続した壁でできており、建物の曲面は石とステンレスに光を反射させています。
リボン型の窓はグレーのフレームで囲まれており、階と階の間には口紅の赤を思わせる細い赤い帯があります。
セント・バジル礼拝堂
テキサス州ヒューストンにあるセント・トーマス大学内にある礼拝堂です。
立方体、球体、平面という3つの基本的な幾何学構造となっています。
立方体はメインの客席を含む建物の大部分を占め、半球体のドームは立方体の上に高くそびえています。
立方体とドームは相互に作用し、チャペルの上のドームは閉じた壁ではなく、むしろ天に向かって開かれているように感じさせます。
チャペルの外観は、キャンパス内の他の建物とは対照的に、白い化粧漆喰と黒い花崗岩で構成されています。
チャペルの屋外にある祭壇への入り口には、テントのようなフラップが伸びており、屋外でありながらも閉じられた空間を作り出しています。
以上、大禅ビル(福岡市 舞鶴 賃貸オフィス)からでした。