ザイマックス様ご来社②
■大禅ビルのブランディングサイト
鎌田様:
引き継ぎ御社のソフト面でのお取り組みについて伺えればと思います。
大禅ビルの発信と言えば、やはりブランディングサイトですよね。こだわりが伝わってきます。
禅院:
ありがとうございます。
同業の貸しオフィスの中でも自社サイトを作り込んでいる方だと思います。
鎌田様:
毎週ブログを公開されていますよね?
禅院:
はい。月に12記事、現在は約200記事が公開されています。
今年には300記事に届くかと思います。
鎌田様:
凄いボリュームです。オンライン発信に力を入れるようになったきっかけは何でしょうか?
禅院:
きっかけは営業力アップですね。
レトロオフィスビルという、ある意味メインから外れたブランディングを狙っていくわけですから、知名度を獲得してブランドイメージを構築するには説明の絶対量が必要でした。
そのためにコンテンツを自由に載せられる発信インフラが大事だと考え、整備した次第です。
現在のサイトは、前のバージョンとリニューアルバージョンの二つを同時に運営しています。
鎌田様:
成約率の効果はいかがでしょうか?
禅院:
最初からサイトを辿って内覧に来られ、成約に至ったのはまだ2件ほどですね。
成約面から言えば、弊社は不動産会社様からのお客様のご紹介がまだメインで、サイトはサブという位置づけです。
ただ、不動産会社様からご紹介されたお客様と異なり、ご自身で弊社サイトを調べられて内覧来られので、購入意思の比較的高いが殆どでした。
鎌田様:
不動産業界ではオンライン営業は一昔に比べかなり増えた印象ですが、不動産会社による紹介がまだ中心を占めているのですね。
禅院:
はい。この傾向はしばらく続くでしょう。
ただ、変化の早い業界ですから備えあれば憂いなしと言うように、オンラインを通じた営業ノウハウを今後も試行錯誤の中で蓄積していければと思います。
デジタルとアナログの両輪で営業を走らせるのが重要です。
それにオフィスビルのサイトは成約率への影響以上に、入居者の満足度向上に効果的だという調査結果もあります。
テナント様もサイトをちょくちょくご覧になっているようですし、
「サイト更新しましたよ」とお知らせすれば、コミュニケーションのきっかけにもなりますね。
■場の記憶
鎌田様:
御社のサイトコンテンツの中で特に印象的なのは、舞鶴や赤坂周辺のランドマークや地名、
かつてあった建物を紹介するシリーズとやビルのメンテナンス工事や日常業務を紹介するシリーズですよね。
これらのシリーズを始められたきっかけについて伺えればと思います。
禅院:
ありがとうございます。
サイト構築の目的は一に自社の営業とブランディングでしたが、不動産を選ぶ際の検討ポイントの中でやはり「立地」の優先順位がとても高いです。
賃料や設備環境の確認の前に、そもそも不動産がどこにあるのか?
そこはどういったエリアなのか?
を皆さん気にされると思います。
ですからビル自体だけでなく、大禅ビルの建つ舞鶴エリアも同時に発信する必要がありました。
点だけでブランディングするのではなく、点を含む面ごとブランディングですね。
鎌田様:
確かに舞鶴はビジネスエリアですが、福岡の商業区と言えば天神と博多ですからね。
どうしても陰に隠れてしまい、特に県外の方には目立たない地区なのかもしれません。
禅院:
はい。舞鶴エリアを検討候補に入れて頂くようにできれば、大禅ビルへのリーチも作りやすいだろうと考えました。
「場の記憶」シリーズはこのコンセプトから生まれたコンテンツです。
大禅ビルでは「時間の積み重ね」をブランド価値に転化しようと努めて参りました。
時間の積み重ねとは、「人との関わりの積み重ね」と同じ意味で、
誰にも使われない、人との関わりのない不動産は、見かけがいくら良くても価値はゼロ。
不動産の価値は、人との関わりの中から創られるべきだと思っています。
それは地域においても同じ。
いま目に入る建物だけが舞鶴の価値の形ではありません。
長い人の生活の歴史の上に今の舞鶴が形作られてきたはず。
それは経済指標だけで捉えきれない無形の価値とも言うべきものです。
法務局や少年科学文化会館など、今は無き地元を代表する建物を「場の記憶」
としてネット上に残せば、地元の方がこれを見た時は昔の舞鶴を思い出せるでしょうし、
また外から来られる方にとっては舞鶴のキャラクターをよりよく掴むきっかけになります。
ここ数年の再開発で舞鶴の風景も大きく変わりました。
この変化の流れはしばらく続くでしょう。
だからなおさら昔と今の風景を記憶に留める役割を大禅ビルが果たせたらと思っています。
そして皆さんが舞鶴に関心が持てるようになれば、ブランディングの第一歩は成功でしょう。
鎌田様:
御社のサイトはまず舞鶴の説明のページから入りますよね。
東京といった県外からレンタルオフィスを検討される方には舞鶴の雰囲気を知ることができて助かると思います。
ここまで来るとブランディングというより、地域貢献に近いかもしれませんね。
禅院:
単なる空間を提供するだけの既存貸ビル業の枠から、更に一歩越えたところに大禅らしさに根付いた価値を提示できればと思います。
大禅らしさとは舞鶴の老舗オフィスビルとしての個性。
地元の風景、歴史の一部を担ってきた存在だからこそ、私たちが場の記憶のインフラを引き受けることに意味があるのだと思います。
ちなみに、この企画をやっているうちに私も舞鶴に愛着が湧いてしまい、去年1月から近くに引っ越してしまいした。会社からも近くとても便利です。
■目立たぬメンテナンスの現場を公開
鎌田様:
御社のサイトでは維持管理や日常業務といった、お客様から見えにくいオフィスビルの舞台裏も公開されていますよね。
これもブランディングの一環で取り組まれているコンテンツでしょうか?
禅院:
ブランディングというより、ブランディングのスタートラインの立つための土台づくりが目的です。
弊社はレトロをコンセプトに打ち出してはいるものの、現実として不動産は「新しさ」で評価されるのが今の日本では殆どです。
一方年季の入ったビルだと、安全な建物なの?
中身は汚いんじゃないの?
設備がボロボロだったら嫌だな、どういう人が管理しているのか・・・
など、レトロ好きよりも不安が先立つ方がどうしても多くなってしまいます。
その不安を払拭してプラスイメージに転換して頂くため、普通のオフィスビルよりも一層
「付加価値づくりの過程」
の説明に力を入れなければなりません。
空調工事や空室の現状復帰、下水処理設備の更新、清掃やペンキ塗り作業などといった
「裏方業務」
も逐一公開することで、「ちゃんとしているオフィスビル」という印象をアピールできると考えています。
鎌田様:
凄く面白いアイデアですよね。
メンテナンス部分はテナント様から見えません。
完璧にできて当たり前だと思われていますし、完璧でなかったらクレームが来ますが、完璧に至るまでの過程をアピールできていれば、万が一の時もクレームが殆どないという統計があります。
ブランディングだけでなく、リスクヘッジの面からも効果の高い取り組みだと感じました。
禅院:
ありがとうございます。
弊社もメンテナンス業務だけなく、インターンシップ生研修やエストニアビジネス、不動産界の歴史の偉人など、様々なコンテンツを発信させて頂いています。
「レトロオフィスビルなのに・・・」というギャップに驚いて頂けたら嬉しい。
それがブランディングのフックになりますから。
■内覧キャンペーンとフェイスブック宣伝
鎌田様:
新しく始められた内覧キャンペーンについてお伺いできれば存じます。
禅院:
大禅ビルの空室は、今のところ一部屋だけですが、今年は一気に3部屋も空く予定です。
ただ、いずれも2~3年程度の現場事務所用の短期賃貸なのです。
そこで、空く時期が事前にわかっているならば、部屋が空いてから営業を始めて埋めていく従来のやり方ではなく、
その前から営業活動を始め、入居のご予約を獲っていくという動き方をやってみようと考えました。
まずもって、内覧に来て頂かなくてはなりません。
過去の経験上、実際に内覧に来られたほぼ全ての方には入居を検討頂けたので、いかに大禅ビルの価値を潜在のお客様にリーチさせ、足を運んで頂くかが勝負になります。
鎌田様:
早めに見込み顧客を確保していくのですね。
内覧キャンペーンを実施するうえで何か工夫された点はありますか?
禅院:
それはもう、豪華景品ですよ。
内覧にお越し頂いたり、あるいは実際に成約されたりすれば、ラーメン、掃除機、コーヒメーカーといった景品が貰えます。
ただ、これら景品も単純な思いつきで決めたわけではないです。
ノベルティのプロである株式会社スペックス様との連携のもと、商品選定から価格帯設定まで戦略立てて、特典のラインナップを設計しました。
鎌田様:
本当に大盤振る舞いですね!反響いかがでしたか?
禅院:
既に1部屋は入居のご予約を頂き、内覧問い合わせも少しずつ増えています。
後はやりっ放しにしないことですね。
内覧実績をきっちり数字ベースで記録し、分析を加えた上で翌月以降のアプローチに活かすようにしています。
鎌田様:
内覧キャンペーンをきっかけに、フェイスブックの活用も始められたと伺いました。
禅院:
フェイスブック広告を活用した宣伝も試験的に始めています。
今のところ内覧問い合わせにはまだ繋がっていないんですが、いいね!が数千くらい付くなど、リーチはできているようです。
SNSは反応がリアルタイムに目に見えるので面白いですね。
鎌田様:
物件を探すならとりあえず不動産会社に問い合わせという動き方がまだ一般的ですからね。
禅院:
そうです。これから色々試して行こうかと。
もともと広告系の人間なので、使えそうなものは何でも試してみたくなるタチです。
稼働率が安定している今こそ、備えとして様々な攻め手を作っていきたいですね。
大禅ビルの建て替え期まで後20年。
本当に建て替えるかはその時に決めようと思っていますが、この20年はとにかくやれることを一生懸命やって行こうと思います。
鎌田様:
社長の攻めの姿勢には本当に頭が下がります。
弊社も今後、斬新な取り組みをされているオーナー様を取り上げ発信していく予定です。
本日はどうもありがとうございました。
禅院:
こちらこそありがとうございました。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。