―上場傾向の不動産近況―

■住宅に求める価値の変化

大禅不動産研究室

 

不動産の評価において立地の重要性は不変である点は、前回の大禅ビル(福岡市 舞鶴 賃貸オフィス)コラムで述べた通りですが、立地の中でも評価ポイントは時代によっても変わります。

 

住宅であれば、近年は「都心」「ターミナル」「駅チカ」が歓迎される傾向にあります。

 

まずは「都心」について。

 

都心から離れた田園ライフスタイルを世に提案したのは阪急の祖・小林一三でした。

 

地価が高い都心でマイホームを構えるのは、明治のサラリーマンにとってハードルが高かったわけです。

 

しかも当時は今のような住宅ローンの制度もありませんでした。

 

郊外田園の自然と、広く安価な土地に付加価値をつけ、マイホームというサラリーマンたちの夢を形にした経営者小林の手腕が光ります。

 

そのエリアこそ今の田園調布であるのは広く知られている通りです。

 

平成の初期まで、日本人は住宅を求めて郊外へ拡散していきました。

 

ニュータウンが開発され、沿線にはマンションが林立していきます。

 

しかし近年、こうした郊外のマンションは人気の下落を辿る一方です。

 

自然環境こそよいものの、どうしても通勤通学の利便性が劣る郊外は敬遠されつつあるようです。

 

加えて都心でも比較的安価なマンションが大量に供給され始め背景もあり、

 

「環境よりも利便性」

 

を重視するようになった働く世代は都心を選択するようになりました。

 

ところで、ここで言う「利便性」とは、もちろん駅からの距離を指すわけですが、最近の傾向として

 

「駅のターミナル性」

 

も重視されるようになってきています。

 

「駅チカ」であることは、住宅購入の重要なポイントであるのに変わりなく、更に

 

「その駅に路線が何本入り込んでいるのか?」

 

という「ターミナル性」が占める重要度が上がってきています。

 

同じ人が集積するエリアとして、ターミナル駅と郊外の住宅団地でどのような違いがあるのでしょうか?

 

それは駅前にはショッピング、飲食、エンターテイメントなどの商業施設、公共施設、オフィスが集まり、昼間と夜間問わず人口が周遊しているからです。

 

人の出入りが激しいエリアほど不動産が値上がりすると言われています。

 

なぜなら空間利用の需要が増えるからです。

 

人が集まれば、住むところ、食べるところ、買うところ、遊ぶところを探します。

 

つまり消費活動が活発になり、街の活力となっていくわけです。

 

単線の駅か、それとも複線の駅かで人口の集積が異なり、形成される街の機能の幅も違いますから、駅のターミナル性も立地の利便性評価の一角も占めると言ってもよいでしょう。

 

■近年の不動産向上

賃貸業

 

とは言え、近年の不動産の値上がりはかつてのバブル期を彷彿とさせるものがあります。

 

2016年以降、大幅な金融緩和策が取られた結果、市中のマネーが不動産に流れ込むようになりました。

 

本来金融緩和策というのは、市場に潤沢なマネーを供給し、企業の設備投資を促進するのを目的としています。

 

結果、景気がアップし、企業の利潤が最終的に消費者へ還流し、消費活動が促進されるという好循環をもたらします。

 

しかし、今日の日本の企業は、売上の多くを海外市場で立てており、国内における設備投資需要はあまり期待できません。

 

企業は売上を借入金の返済に充ててバランスシートを整え、非正規雇用を増やし人件費を圧縮、そして残った金を内部留保として蓄えて来ました。

 

マネーが市場に出ても、企業は内部留保を持っているため銀行からお金を借りなくても済む。

 

金を持て余した銀行は、このままだと売上が上がらないまま利息だけを預金者に払い続ける羽目になるので、不動産にマネーの捌け口を求めたわけです。

 

■拍車をかけたマイナス金利

大禅不動産研究室

 

銀行を不動産に駆り立てた背景の一つに、2016年に実施された日銀のマイナス金利政策があります。

 

民間銀行は準備預金制度に従い、預金の一定割合を日銀に強制的に預け入れしています。

 

この預け入れの割合を預金準備率と言って、通常の金利政策の下では、民間銀行は日銀に預けた準備預金のうち、法定額の超過分については日銀から利子を貰えます。

 

しかしマイナス金利では、この利子がマイナスになる、つまり超過分の準備金について民間銀行が逆に日銀に利子を支払わなければいけないという政策です。

 

民間銀行にマネーの市中放出の圧力をかけることで個人や企業に対する融資を促し、投資・消費を活発化させ、デフレ脱却を目指します。

 

民間銀行は預金者の預金を企業に融資し、その利ざやを稼ぐことを本業としています。

 

しかし現状では市場の資金需要が薄く、民間銀行は貸出先という預金の運用先が確保しにくい状況です。

 

かと言って、お金を貯め込めばマイナス金利で逆利ざやが進むので、なんとかお金を市中に放出しなければなりません。

 

その運用先として狙いをつけたのが不動産だったのです。中でも、「不動産投資向けローン」と「住宅ローン」に資金が流れ込みました。

 

「不動産投資向けローン」は、主にアパートやマンションといった賃貸用不動産に対する融資です。

 

金利で飯を食っている民間銀行ですが、今は米粒程度の金利しかなく、しかもマイナス金利政策のプレッシャーが控えています。

 

しかしながら、銀行も融資基準を甘くして不良債権を増やすようなリスクを負いません。

 

そこで目につけたのが、金利が高く、不良債権リスクの低い不動産投資向けローンでした。

 

現在日本の個人金融資産はおよそ1,800兆円にも達しており、その約半分は60歳以上の高齢者が所有しています。

 

高齢者にとっては関心事の一つが「相続」です。

 

例えば預金が2,000万円あれば、そのまま全額が相続税の課税対象となってしまうところ、不動産で相続した場合だと、土地は路線価評価額、建物は固定資産税評価額で評価されます。

 

そして一般的にはこれらの評価額は時価よりも低いため、2,000万円のうち課税対象となるのは約59%の1,180万円となります。

 

更に投資用不動産の場合、課税対象額は更に34%軽減されますので、トータルで課税対象額が約7割軽くなるという計算です。

 

加えて、土地を遊ばせてしまうと、更地の評価は高くなります。

 

土地上に投資用アパートやマンションを建てるのは相続評価額を圧縮する最上の方法と言えます。

 

相続税対策のニーズを捉えて、銀行は不動産投資向けローンの融資条件を緩和し、個人資産家へ営業攻勢をかけています。

 

そして、銀行預金のもう一つの出口が「住宅ローン」です。

 

金利こそ低いものの、住宅ローンは長期間に亘って借りて貰える安定した商品です。

 

不動産価値も上がり傾向ですので、貸出先の担保余力も期待でき、お金を貸出しやすくなります。

 

■現状の不動産好況

大禅不動産研究室

 

人は歳を取ると、裕福層を中心に「資産防衛」の動きが活発化します。

 

相続税対策のニーズはその一つで、ここへマネーが流れ込んでいます。

 

一方では戦後70年を経て、ビルや施設の老朽化が進み、建て替え需要、再開発、リフォームなど、ディベロッパーや不動産オーナーには資金需要が生まれています。

 

東京都区部の住宅地価は2013年に上昇に転じ、2017年には前年比3%の上昇。

 

一方商業地の対前年比は住宅地以上の5%上昇となっています。

 

更に、こうした上昇傾向は東京のみならず、大阪や名古屋、更に福岡と、札幌、仙台、広島の「地方四市」にも見られています。

 

住宅地では仙台は対前年比10%以上、商業地では福岡市はなんと20%以上の上昇を記録しています。

 

こと福岡市の地価は、政令指定都市中ダントツの人口増加数・増加率も影響しているように思われます。


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