デザイナーたちの物語 ルイス・カーン

弊社、大禅ビルが行っております貸しビル業は、本質的には空間に付加価値をつけていくプロデュース業だと考えています。

 

そのような仕事をさせて頂いている身ですから、建築やインテリア、ファッションといったデザイン全般にアンテナを張っており、

 

そこで得たヒントやインスピレーションを大禅ビルの空間づくりに活かすこともあります。

 

とは言え、私は専門的にデザイナーとしての教育を受けたことはありませんから、本職の方々と到底比べられません。

 

本物のデザイナーというのは、既存の概念を超越するような美を生み出すアーティストに近い存在と言ってよく、その足跡の後には全く新しい地平が拓けていくものだと思っています。

 

◯20世紀最後の巨匠

今回ご紹介するのはルイス・カーン。

 

「20世紀最後の巨匠」と評される建築家です。

 
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カーンはブルータリズム(野獣主義)の代表者の1人でもあります。

 

冷酷で厳しい獣のような手法を用いた表現主義で、荒々しさを残した打放しコンクリートなどを用いた彫刻的な表現を特徴としています。

 

第二次世界大戦後にモダニズム建築の国際様式が形式主義化したことに対し、モダニズム建築の機能主義の原点に立ち返ることを目指して提唱されるようになった様式です。

 

カーンの作品も、煉瓦とむき出しのコンクリートといった建材を機能美へと昇華させたところに特徴があります。

 
ルイス・カーン4
 

◯住宅一筋

カーンは1901年にロシア帝国エストニア地方の貧しいユダヤ人家庭に生まれました。

 

日露戦争の際に父親が軍に召集されることを恐れ、家族はアメリカに移住。

 

一家は鉛筆を買う余裕すらなかったという。

 

カーンは幼い頃から芸術に秀でていたそうです。

 

フィラデルフィアの高校生コンテストの中で、高校時代に何度もコンクールで受賞するほどの腕前だったという。

 

大学はペンシルバニア大学美術学部建築学科に通い、そこで学位を取得します。

 
ペンシルベニア大学
 

同大学を卒業すると、設計事務所に製図工としてキャリアをスタートさせ、1926年のフィラデルフィア万国博覧会の設計にも携わっています。

 

一見順風満帆な滑り出しのようみ見えますが、1929年の世界大恐慌のあおりを食らって失業。

 

友人建築家たちと共同で住宅公社に対して公共住宅の提案を行ったり、友人の家の改装を行ったりして食いつなぎながら、1935年に自分の建築設計事務所を立ち上げます。

 

アメリカで公共事業による住宅建設の機運が強まると、アメリカ合衆国住宅局、フィラデルフィア住宅局が相次いで設立される中、

 

早くから公共住宅の問題に取り組んでいたカーンはその実績を認められ、フィラデルフィア住宅局顧問建築家とアメリカ合衆国住宅局顧問建築家に就任します。

 

目覚ましい昇進ではあるものの、この時のカーンはまだ独自の設計スタイルを確立できていない、あくまで数ある優秀な建築家のうちの一人でした。

 

◯遅咲きの建築家

カーンが彼の独特な建築スタイルに到達したのは60代になる頃です。

 

それまではオーソドックスな国際様式に従った設計がほとんどでしたが、イタリア、ギリシャ、エジプトなどのヨーロッパ各地の古代建築に触れたことが彼の転機となり、

 

国際様式をベースとしながらもイデオロギーに捉われることなく、独自のセンスを吹き込んだのでした。

 

彼を一躍世界的に有名にした作品は「ペンシルベニア大学リチャーズ医学研究棟」です。

 
ルイス・カーン4
 

レンガで覆われた4本のシャフトが特徴の建物で、垂直シャフトには階段室や排気、給気ダクトなどが納められています。

 

そこではカーンが提唱する「奉仕する空間 (Servant Space)」 と 「奉仕される空間 (Served Space)」という空間構造を明確に区分するアイデアが採用され、人の居住空間と設備の空間が分けられています

 

以下彼の代表作を3つご紹介します。

 

◯フィッシャー邸

「奉仕する空間 (Servant Space)」 と 「奉仕される空間 (Served Space)」のコンセプトは彼が設計による私邸にも反映されています。

 

まずは「フィッシャー邸」

 
ルイス14
 

フィッシャー邸は木立の中に建つ2つの木製キューブで成り立っています。

 

道路側は壁で閉じており、自然豊かな庭に対しては窓を大きく開いています。

 

2つのキューブは、人が集う空間(リビングキューブ)とプライベートな空間(スリーピングキューブ)として、それぞれ機能が明確に分けられています。

 

性質の異なる空間を分離することも大事ですが、それらの間にどのような関係性の橋を架けるかも大事です。

 

カーンは2つのキューブを斜めに配することで空間を繋ぎ、採光と外観の奥行きに変化を持たせました。

 

建材は基礎から外壁の杉まで全て地元産で揃え、これが周辺の環境との調和を生み出しています。

 

「ある家族のためのよき家は、ほかの家族にとってもよき家になる資質をもつ」「どんな建物も、家なのです」という信念を持っていたカーンは、6年かけてこの住宅を完成させています。

 

どんなに多くのプロジェクトで忙しかろうと、彼は住宅の依頼を断らなかったそうです。

 

ただ理想を追い求めるあまり妥協を知らず、変更点が生じると一から設計し直すので、工期もコストも合わないことが多々ありました。

 

それはまた、満足いくまでにクライアントの要望と徹底的に向き合うカーンの建築家としての姿勢の現れでもあり、魅力でした。

 

◯エシェリック邸

エシェリック邸は閑静な住宅地の一角に建てられています。

 
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この住宅もまたカーンの設計思想の特徴であるキューブが並んだ構成となっています。

 

この住宅でも「奉仕される空間」はメインの部屋となり、「奉仕する空間」は「奉仕される空間」を支える機能、例えば台所、便所、廊下、階段、機械室などが入っている空間となっています。

 

エシェリック邸の4つの長方形のキューブには「奉仕される空間」「奉仕する空間」がそれぞれ2個ずつ、交互に配置されています。

 

「奉仕される空間」であると食堂はほぼ同じ平面形。居間は2層に吹き抜けています。

 

シンプルな平面構成でありながら、窓や外壁の細やかな設計によって、それぞれの部屋に特徴がある豊かな空間をもった住宅です。

 

◯ソーク生物学研究所

ソーク生物学研究所では、平面だけではなく、断面にまで「奉仕される空間」「奉仕する空間」のコンセプトを展開させています。

 
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四角形のフレームを単位として構造により柱のない空間を実現させ、それによって生まれた広い天井裏を設備空間、研究所と個人の研究室との区分に展開がなされています。

 

外観はコンクリート打ちっ放しにチーク材を使用した木製サッシがアクセントとなっています。建物自体は広場を挟んで左右対照に配置され、中庭に面して海を望むように角度付けられて配置されています。

 

空や海と一体となったシンメトリーの美しいカーンの代表作です。

 

カーンの作品は意匠・構造・設備・素材が有機的に融合し、無駄がありません。その造形的な特徴ゆえ万人の心を捉えてしまう。

 

空間においては洗練された存在感を放つカーンのような直線美はなかなか日本で目にできないかもしれません。

 

巨匠の作品もいつかぜひ見てみたいです。

 

以上、大禅ビル(福岡市 舞鶴 賃貸オフィス)からでした。

 
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